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イベントレポート

浜フィルEコンサート出演者へのインタビューVol.9

20200501

こんにちは。
今回のEコンサート出演者へのインタビューは第11回、第20回の公演に出演いただきましたソプラノ歌手の岡本実佳さんです。

浜松フィルハーモニー管弦楽団(以下浜フィル):今までに夢汎ホールで開催致しましたEコンサートに2回ご出演いただきましたが、ご感想をお聞かせください。
岡本実佳(以下岡本):素敵なサロンでのコンサートですので、お客様との距離も近く、楽しく演奏させていただきました。

浜フィル:皆さんにお聞きしておりますが、声楽を始めたきっかけを教えて下さい。
岡本:3歳からピアノを習っておりましたが、中学を卒業する頃、練習漬けの毎日に少々嫌気がさしておりました。あるとき知り合いの大学教授に私の声をきいていただく機会があり、声が良いので声楽を勉強してみたらどうですか?というアドバイスをいただき、声楽を勉強しはじめました、そして、今に至ります。
結果、歌うことがとても性に合っていましたね。

浜フィル:オペラの本場イタリアでも学ばれていたという事で、実際にイタリアで学ばれて感じたことや驚いたことはありますか?
岡本:一番感じた事は、素晴らしい演奏家の皆さんは音楽に対して、とても謙虚で、作曲家の残した作品に対して尊敬の念と、どう忠実に表現するかという大切な思いがあるということ。そして、その為に努力しつづけることに終わりはないということです。
オペラには当たり前ですが歌詞があります。言葉の発音や表現には想像以上に気をつけなくてはいけないたくさんのことがあるということもコレペティ※1とのレッスンで学びました。
そして、歌の先生からも沢山のことを学びました。私の恩師であるリナ・ヴァスタ先生は、偉大な作曲家ヴェルディ※2が残したミラノ※3にあるカーザディヴェルディ※4に住んでいます。この養老院は音楽、芸術に貢献した素晴らしい芸術家達が暮らしています。留学中、毎日のようにカーザディヴェルディにレッスンに通っておりました。彼女から教わったテクニックは私の宝物です。そして、私がレッスンにいくといつもオペラスコア※をひらいてピアノの前に座っているリナ先生の口癖は「すべてのことは楽譜に記してある。だから私は楽譜を見るのが大好きなのよ!ヴェルディが何を伝えようとしているか何時間でもこうして楽譜をみていられるわ!」その通りです。楽譜には作曲家から演奏家に沢山のメッセージが記されているのです。わかっていたつもりですが、まだまだ足らないことでした。
そしてもう一つ、先生が私におっしゃってくれて今も励みになっていることは「あなたは素晴らしい声を持っている。どんな環境になったとしても、絶対に歌い続けなさい。歌うことをやめちゃダメよ!」という言葉です。自分の生徒が可愛いがゆえに言ってくれたことだとは思いますが、リナ先生ご自身、年の離れた偉大な指揮者の旦那様と結婚されて、自由に歌えなくなってしまう環境の時代がありました。そんな経験もふまえ、こんなアドバイスを私にしてくれたのではと思います。とても心に響きました。
彼女からは、音楽のみならず人としての生き方すべてを教えていただきました。
先生とは今も時々電話で、楽しくお話しさせていただいています。
また、カーザディヴェルディでも沢山のコンサートに出演させていただきましたが、観客の皆さんは素晴らしい音楽家にもかかわらず、会場はとてもあたたかく、思わず指揮をふる動作をしたり、一緒に口ずさんでくださったり、どこで演奏した時よりも表情豊かで音楽に対する愛に満ちた空間でした。このことはなによりも幸せな時で、今も自身でコンサートを企画するときのベースとなっております。
イタリア留学中に学んだことは、まだまだたくさんありますが、イタリアでしか学べないこと、その土地に長く住んでこそ感じることは、今の音楽活動においても、とても影響を受けています。そして、いつももう一つの故郷イタリアに想いをはせています。
浜フィル:インタビューvol.5でドイツにて勉強されていたフルーティストの青田純子さんも仰っていらっしゃいましたが、やはりクラシック音楽の本場であるヨーロッパの歴史ある国々は、音楽家を支える環境が素晴らしいですね。岡本さんの歌をお聴きしていると楽譜の隅々まで読まれているのが分かる演奏で、恩師から薫陶を受けられていたのですね。

浜フィル:最後になりましたが、今後Eコンサートで取り組みたいプログラムなどはありますか?
岡本:電子ピアノは色々な音色を出せるので、古典ものやサロンならではの歌曲等も積極的に歌わせていただきたいです。

※1コレペティ…コレペティトールの略。オペラ歌手にピアノを弾きながら指導する専門家。
※2ヴェルディ…ジュセッペ・ヴェルディ(1813-1901)イタリアを代表オペラ作曲家。代表作に『リゴレット』『椿姫』『アイーダ』などがある。
※3ミラノ…イタリア北部の大都市
※4カーサディヴェルディ…正式名称は『Casa di Riposo per Musicisti カーザ・ディ・リポーゾ・ペル・ムジチスティ』 (音楽家のための憩いの家)。G.ヴェルディが建設した音楽家の為の高齢者施設。

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圧倒的な歌唱力と表現力で聴衆を魅了するDIVA!岡本実佳さん(ソプラノ)へ
インタビューさせていただきました。岡本実佳さんご協力ありがとうございます。

=プロフィール=
岡本実佳 ソプラノ

武蔵野音楽大学声楽科卒業。日本オペラ振興会育成部修了後、イタリアに 6年間留学。ミラノ音楽院にて研鑽をつむ。イタリアではCasa di Verdiでの定期コンサート、PoloMozart、他多数のコンサートに出演。また日本においてもオペラ《フィガロの結婚》伯爵夫人、《カルメン》ミカエラ、《ラ・ボエーム》ミミ、《椿姫》、《サンドリオン》、《修道女アンジェリカ》などに出演。また浜松においてオペラ《イル・トロヴァトーレ》レオノーラにて好評を博す。ソリストとしては W.A.モーツァルト《戴冠ミサ》、マーラー《大地の歌》、ベートーヴェン《第9》などのソプラノ・ソロを務め好評を博す。自身でも毎年3月に東京、浜松においてMIMOSA spring has come!コンサートを企画、出演、好評を博している。ベルカントコンコルソ第1位。飯塚新人音楽コンクール 入賞。2019年、静岡音楽館AOI第24回「静岡の名手たち」オーディションに合格、コンチェルト賞を受 賞。その他国内外多数のコンクールにて入賞。菊池英美、L.ヴァスタ、L.ゴルラ、F.カステッラーナ諸氏に師事。藤原歌劇団正団員、浜松市在住。